スイス鉄道ツアーその2(ピラトゥス登山鉄道)

スイス2日目は登山電車である。

山に囲まれたスイスは登山電車王国でもあり、百年も昔から登山電車がいくつも作られてきた。有名なユングフラウやマッターホルンにも、当然電車は走っているのであるが、ここルツェルンの近郊にも、ピラトゥス・リギやティトリスという山々が存在する。その中で、山の上で泊まりたいという希望に日程上沿うことができたということもあり、今回は「ピラトゥス鉄道」に乗り、標高2000mを超える「ピラトゥス山」に登ることになったのである。

ピラトゥス山に行くには、実は登山電車とロープウェイと2つの手段がある。当然、鉄道だけでなくロープウェイも魅力的ではあるため両方体験したい。というわけで、諸々検討した結果、登りを電車、下りをロープウェイということにする。同様に両方乗る客が大半と思われ、そのための周遊チケットも売られている。

まずルツェルンから鈍行に20分程度乗り、アルプナハシュタットに到着。ちょうど昼前でもあったので、何か食べようと駅の売店に向かったが、なぜかこの駅の売店には、飲食物以上に鉄道模型が充実しており、列車の他、セクシーなおねえさんのフィギュア(もちろん、鉄道模型用なのでちっちゃい)なども売られている。何か買って帰ろうかという欲望を抑えつつ、昼食も山の上で食べることとし、登山電車の駅に向かう。

ピラトゥス鉄道は、480パーミルという勾配。因みにわれらの神戸電鉄は、最大で50パーミルなので約10倍である。当然、われらの神戸電鉄のように、何事もなく登っていくのは不可能であり、ラックレールという、中間にかみ合わせる形のレールを1本敷いて対応している。

改札前で待っていると、赤い列車が6輌くらい立て続けに到着し、山からの乗客を降ろしたあと、線路丸ごと移動して乗車ホームにやってくる。その中の1両に乗り込む。傾斜に対応する形で平行四辺形の電車で、何だか遊園地の車両のようである。

発車するといきなりこれでもかという急勾配の連続。下を見ると、さっきまで乗っていたローカル電車の線路が、あっという間に小さくなっていく。木々の緑や、湖が美しい。

15分くらい乗ると中間地点で、山の上からの電車とすれ違い。電車としても急勾配の連続で一休みといったところであろうが、これだけの勾配だとくだりのほうがかえって力が必要と思われる。

中間地点を過ぎて更に上る。ここからは、標高もかなり高くなっており、木々の緑がなくなり、ゴツゴツした岩山が続く。そんな岩山の合間から、カウベルの音が聞こえて牛がいたり、上を見ると1,2分前に先行した電車が走っているのが見えたりする。遠くのほうでは、アルプスかもしれない雪山も見え、日本では見ることができない、いかにもスイスといった景色が展開される。

こうして約40分でピラトゥス山の駅に到着。10分くらい歩いて本当の山頂までの軽いハイキングを楽しんだり、この駅の上にある円柱形のホテルに1泊してディナーと夜と朝の景色に感動したりと、スイスの山の上を堪能した。

帰りはロープウェーとゴンドラを乗り継いで下山。朝で空いていたこともあって、かなりのんびりした気分になれた。

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スイス鉄道ツアーその1(ウィリアムテル・エキスプレス)

前夜遅くイタリア・ミラノに到着した我々は、翌朝ホテルで朝食を取ったあとそこから歩いて3分の『ミラノ中央駅』に向かう。今日は、『ウィリアムテル・エキスプレス』への乗車をメインに、一気にスイス北部のルツェルンまで向かうのである。『ウィリアムテル・エキスプレス』とは、ウィリアムテル特急ともウィリアムテル急行とも訳されているが、スイスのベリンツォーナからルツェルンまで、ウィリアムテルゆかりの地を列車と船で行くというもの。しかも、列車は1等の展望車両、船は食事つきということで、日本にいるときからかなり期待していたものである。

ミラノ中央駅は、昨日も通ったのだが一言でいえば「荘厳」。日本の上野駅の地上ホームのごとく、行き止まり式のホームがいくつもあるが、上野駅とスケールが違うのは、20本以上の線路があることである。またその線路を覆う屋根とか建物が、かなり大袈裟なつくりである。当然、ホームには、イタリア国内への特急の他、フランスTGVや欧州各地からミラノへの夜行列車など、さまざまなタイプの列車が止まっているわけで、旅情をそそられる。我々はその中の1つである、スイス・チューリッヒ行きの特急に乗り込んだ。スイスに入れば、ウィリアムテル・エキスプレスのために気張って購入した「スイスパス」の1等が適用されるのであるが、この列車はイタリア国内であるため、2等車であり、通常の4人掛けボックスシートに腰掛ける。

ミラノを発車して1時間くらいでコモ湖を過ぎ、やがてスイスとの国境にさしかかる。スイスは、EUには加盟していないこともあって、入国の管理が厳重かと思っていたが、国境の駅で係員は乗車したものの、入国審査もなく、パスポートを見せることすらなく、15分くらい停車したのち列車はスイスに向けて発車。なにやら拍子抜けではあったが、ともかくスイスの町、ルガーノに無事到着した。

ルガーノではまずは荷物を預けることに。といってもコインロッカーではなく、スイスの鉄道では、駅に荷物を預けると翌々日の朝までに別の駅に運んでくれるサービス(ライゼゲベック)がある。これを使うことによって、2,3泊の着替えその他をリュックにつめれば、その間重いトランクからは開放されるのである。値段は10スイスフラン。我々はひとまずルツェルンまでのトランクの運送をお願いし、身軽になる。

その後少し時間があったので、駅から街に出るケーブルカーに乗る。ルガーノは、街そのものは湖に面しているが、駅は高台にあるため、駅と街を結ぶケーブルカーがあるのだ。2分くらいで街に到着し、散策。湖に面したルガーノの街は、大変静か。カジノはあるものの変に観光地化されていないのも良い。人も穏やかそうだ。1時間くらい散策し、駅に戻る。

ルガーノ駅からは本格的なスイス鉄道の旅が開始され、1等のスイスパスが威力を発揮する。まずは今日のメインである『ウィリアムテル・エキスプレス』の発車駅であるベリンツォーナ駅に鈍行で向かう。鈍行ではあるが、JR九州チックなおしゃれな車両であり、しかも1等車が連結されていたので、迷わず1等車に陣取る。40分くらいの乗車時間でその間いくつかの駅に止まったが、1等車の乗客は我々以外にはおらず、なぜかあった電源コンセントでデジカメの充電をやったりするなどやりたい放題、しかも非常に快適であった。

ベリンツォーナ駅からは、いよいよウィリアムテル・エキスプレスへの乗車である。しかし、時刻表で指定された13時発の列車を見ると、大々的に列車名をうたっているわけではなく、どうもチューリッヒ行きの単なる特急のようである。本当に『ウィリアムテル・エキスプレス』という列車があるのかどうか大変不安になり、駅員に聞いてみたところ、やはり13時の特急に乗ればいいとの返事。駅員がそういうならとホームで列車を待っていると、13時発の特急が現れた。ルガーノまで乗っていた特急とそれほど変わらない編成であったが、1両だけ、窓をかなり大きく取った展望車両が連結されている。ウィリアムテル・エキスプレスについては、我々も事前に指定席を取っていたのであるが、そこで指定されていた車両が、この展望車両であった。

車両に乗り込むと、1人のおっさんが我々の指定席を占拠している。その席の窓際を見ると、確かに我々の降りるであろう駅までの予約が入っている札が差し込まれており、間違いなく、我々の席である。占有権を主張すると、おっさんは別の席に移動した。こうして、まだ半信半疑ではあったがウィリアムテル・エキスプレスの旅は始まった。

ベリンツォーナ駅からは、まっすぐ北に向かっていくコース。まずは高度をグングン上げていくことになるのだが、その上り方が日本ではあり得ない構造なのである。すなわち、1,2分後に通るであろう線路が、真上に見える、つまり、線路が蛇行しながら上に向かっていくのである。更にその中にループ線があったりするなど、線路のスケールの大きさにまず圧倒されてしまった。また上までガラス張りである展望車両から見える景色にもすっかり圧倒されてしまった。
面白かった。楽しかった。

こうして列車の旅を1時間半程度堪能。列車は山を降りてきて、我々はフリュエレンという駅で下車する。今日の最終目的地であるルツェルンへは、このまま列車に乗って途中で乗り換えれば、それほど時間を要さないはずであるが、ウィリアムテル・エキスプレスの旅はここから湖船に乗るのである。

そもそもウィリアムテルというのは、私も息子の頭の上のリンゴを打ち抜いた話と甲子園球場のホームランの音楽(ウィリアムテル序曲)という、浅はかな知識しかないのだが、スイスの英雄であるらしい(ホームランの音楽も、『スイス独立軍の行進』という名前)。実際には実在したかどうかも怪しいのだが、ウィリアムテルが活躍したのが、この湖の畔であるようなのだ。というわけで、ウィリアムテル・エキスプレスとしては、船に乗らないと話にならないのである。そして、この船に乗って食事をしつつウィリアムテルに思いを馳せることが、必然的にウィリアムテル・エキスプレスのメインになるのである。

フリュエレンの港に入ってきた、スイス国旗を掲げた船は、中は殆どレストランという船であり、どうやら食事をすることが前提の船であることは間違いなさそうである。しかし、我々が本当に食事にありつけるかどうかは、同じような行程の人を殆ど見かけなかったこともあってかなり不安になってきた。とりあえず、あいている席に座ってレストランの係員にチケットを見せる。

すると、係員は別の係員に問い合わせたようでもあったが、これでOKとのことで、まずはこれもチケットに含まれていた記念品を持ってくる。出来合いのお粗末なものだろうと思っていたが、ウィリアムテル・エキスプレスの柄が入ったスイスナイフと、チョコレートと、案内パンフレットが1つづつ手渡された。特にナイフは、普通に買えば1個15スイスフランはするもので、これは本当の意味でのスイスの記念品となりそうなものである。

そしてしばらくするとお食事が登場。15時過ぎということでランチメニューとなったが、出てきたのは期待に違わぬすばらしいもの。特にメインのチキンのクリームソースは本当に美味であり、朝以降何も食べていない我々はガツガツ食ってしまったが、もったいなかったと後悔。本日の夕食が無しで済んだのは言うまでもない。

食事後は景色を見るために甲板に出て景色を堪能。ちょっと肌寒く、最後には雨が降ってきてしまったが、ウィリアムテルが独立のために戦った?というところから想像される荒々しさは全くなく、普段の日本での慌しい生活を忘れさせる、のんびりしたものであった。

3時間の船旅の後、ルツェルンの街に到着。ホテルに着き、メシも食わずに暗くなる前の20時過ぎにはもう寝てしまっていた。

ウィリアムテル・エキスプレスは、景色や食事など、『スイス』の良さが凝縮されたものであった。また、実在するのかどうかがわからないことも含め、ウィリアムテルそのものでもあった。

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